バンコクから飛行機に乗り、ミャンマーに着いた。
ミャンマーでは噂の通り、FECの強制両替があった(2002年当時)。
FECとは、ミャンマー政府が外貨獲得のために作り出した兌換紙幣のこと。
FECは海外で両替することができないので、一定額を強制両替してしまえば、結局は両替分をミャンマー国内で使い切らなければならないのだ。
なお、FECは中国からの由来とされている。かつては中国もFECを用いていたのだ。たぶん共産国つながりでアイデアをもらったのだろう。
FECの価値はドルと同じとされている。
もちろん実際は異なる。
実際の経済をあらわしているヤミ両替市場では、FECはドルよりも交換レートが低い。
だから、空港でFECに強制両替させられることは旅行者にとって何のメリットもない。
しかし、今から考えると、長期旅行者にとってはFECはそれほどデメリットではなかったのかもしれない。というのも、長期間ミャンマー国内に滞在していれば、強制両替分くらいは使ってしまうからだ。
FECは公にはドルと同じ価値なのだから、現地通貨である「チャット(Kt)」に両替しないで、公の価格を表示している場所で「FEC」として使用すれば良いだけのことだ。
私が入国した時、強制両替額は200$だったが、交渉で簡単に100$に下がった。しかし、ゲストハウスで会った人は50$まで下げたといっていた。おそらく交渉の余地は大きいのだろう。もちろん公務員相手なので、交渉するにはそれなりのことは必要だ。
なお、当時のヤミレートは100$紙幣の場合1$=960Kt、20$紙幣の場合1$=930Ktくらいが目安だった。高額紙幣の方が交換レートは有利になる。
また、ヤミであるため交換レートは地域によって異なり、ヤンゴンでは有利なレート、ついでマンダレーが有利だ。逆にピイなど都市ではない場所ではヤンゴンのFEC程度のレートになってしまう場合がある。場所によって両替レートが異なるのはヤミ両替屋の手間が関係しているのだろう。
ここで、ヤミ両替の「ヤミ」という言葉に嫌悪感や罪悪感を示す人もいると思うので、補足する。
ミャンマー国内でのヤミ両替は実質的に正規の両替だ。
というのも、政府の公定レートはあまりにも経済の実態とかけ離れているからだ。
かつては公定レートの両替所があったが、あまりにも馬鹿げたレートなのでほとんど利用される事はなかった。現在では政府も黙示的にヤミレートを認め、公定レートと実質レートを使い分けている。
以上のように、為替レートで二重の基準を用いているミャンマーだが、その基準を用いる意味は
どこにあるのか?
もちろん、旅行者をはじめとする一般人相手に公定レートの両替を期待するはずはない。
そうであるならば、公定レートの両替を期待している相手は一般人ではないのだと言える。
そう、相手は政府なのだ。
ガチガチの日本政府はもちろん公定レートを採用している。これだけで、おそらくミャンマーに相当の金をバラまいているのだろう。何しろ一般人が公定レートで実際の生活をするとしたら、ミャンマーの物価は日本など比較にならないくらい高額になってしまうからだ。一般人の生活でそうなのだから、大使館の維持費用を考えるととんでもない金額になるのではないだろうか。
逆に言うと、日本大使館で何かの手続きをする時は、在ミャンマー日本大使館よりも安い場所はないと言える。為替レートの二重の基準の恩恵を受けることができるからだ。実際に在ミャンマー日本大使館はパスポート増補の穴場として旅行者の間で有名だ。
私も利用したが、得したと思う反面、このままで良いのか?と疑問を持ってしまった。むしろこれをきっかけにして、形式的なことばかりを守ろうとする役人の危険な部分を知ったというところだ。おそらく、こういう費用の無駄遣いは在ミャンマー大使館だけではないだろう。
最近、日本の財政危機が表立ってきたが、その対策を増税や国債に頼るのではないのは明らかだ。増税は消費を停滞させるし、国債の大量発行は自転車操業の元になる。
すべての無駄遣いの大幅な見直しをすれば、国の財政は現状の収入でも改善されるのではないだろうか。
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シュエダゴンパゴダ(ヤンゴン)
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