以前、テレビでムエタイバーを取り上げていた事があった。
ムエタイバーはムエタイの試合を観ながら酒や食事を楽しめる場所だ。
東京のどこかにあるということは知っていたが、具体的な場所は分からず、「いずれ行こう」のままで留まっていた。
後日、友人にこの話をすると、行動力のあるその友人はすぐにムエタイバーの場所を探してくれ、予約もとってくれたのだった。
そのムエタイバーは綾瀬にあった。
綾瀬駅西口を出て、パチンコ屋とサンクスの通りを少し進む。すると左手に看板が見えてくる。行けばすぐに分かる場所だった。
ムエタイバーの名前は
オーエンジャイと言う。中にはタイ人の店員がいた。もちろん日本語は通じる。
入ると、すでに席は客でいっぱいだったが、友人が予約を入れておいてくれたおかげですんなりと席に着くことができた。来るときは事前に予約を入れておいた方がいいだろう。
リングは店内にあった。というより、普段ここは練習場として使われているようだ。
そのリングはバンコクの
ラチャダムナンで観たときのリングよりもサイズが小さかった。試合が始まる前に説明があったのだが、やはりこのリングは小さいらしい。普通のリングの半分くらいだそうだ。また、ルールには制限があり、ヒジと顔面へのヒザ、ローキックは禁止されている。
こう書くと、「制限が多くてつまらないんじゃないか?」と思うかもしれないが、そんなことは全くなかった。むしろ、食事をしながら観る試合はそのくらいの制限があった方が自然に観れるのだ。
リングが小さいのは様々な関係で仕方ないが、逆に考えると、このリングには逃げ場がないので、試合中は激しい打ち合いをせざるを得ない。また、ヒジと顔面ヒザが禁止されているのは流血を防ぐため。食事中、それも男性だけでなく女性もいるような場所で流血シーンはあまり好ましいものではないので、これを防ぐのは当然。また、現実的な問題として大怪我をした時の医療体制というのも関係している。これはローキックにも関係している。ローキックは一見地味だが、ダメージが非常に大きいのだ。
…というような説明をしてもらえる。実際に試合を観てみると確かにその通りだと納得。非常に考えられている。
そして肝心の試合内容だが、ルールに制限があるからといって、茶番というわけではない。本気の試合が多いように見えた。選手も元日本ランキング1位の選手が出てきたりしてレベルが高い。そんな選手達が狭いリングでガンガンに打ち合うのだ。面白くないはずがない。試合が始まるとすぐに店内は客の歓声と熱気に包まれたのだった。
最後の試合は、タイ人トレーナー同士の試合だった。このトレーナー達はものすごい経歴の持ち主でタイのチャンピオンにもなったことがあるらしい。ただし現役を引退してからかなり時が経ってしまっているせいか、体型はじゃっかん肉付きが良くなっていた。試合が始まるまでは、正直言って彼らで大丈夫なのか?と思っていた。
しかし、試合が始まるとこれがまたそれまでのガチンコとは違う面白さがある。
真剣勝負と思いきや、オーバーパフォーマンスになったり、壮絶な打ち合いを始めたり…リングで行われているのは確かにムエタイなのだが、その内容はまるでプロレスの名試合を観ているようなのだ。彼らは長年の経験から「魅せる戦い」というのを知り尽くしているらしい。非常に面白い試合だった。
以上のような試合は一日に4試合行われる。
試合の合間に、女性限定ではあるがミット打ちもさせてくれる。
ムエタイバー。こいつは面白いし、とても興奮する。食事も美味い。
格闘技好きの人もそうじゃない人も、一度行ってみると良いだろう。
私自身もまた行くと思う。
※なお、試合は毎週土曜です。