旅人4人と船頭1人を乗せた小さなボートはストゥントレンの街を離れた。
このボートにはエンジンがついており、見かけのわりにスピードが出るようだ。
振動と音はすごいが、乾季で水量の減ったメコン川を小気味良いペースで進んでいった。
乾季。
それはメコンの水量に大きく関わってくる。
周りを見渡すと、雨季の頃にはきっとここまで水があったんだろうな、と思わせる跡が岩や岸にところどころに残っている。その跡は今の水面のはるか上に存在している。
川面を見れば、水草や岩が水面ギリギリにまで接している場所もある。こんな場所にボートが乗り上げてしまったら大変だ。
しかし、小さなボートはスピードを出しながらも、そういった場所を巧みに避けていく。
ボートといい、バイタクといい、東南アジアの人々の運転テクニックには感心するものがある。よくこんなところを避けていけるものだ。
本当は危険と紙一重なのかもしれないが。
しばらく走り続けていると、後ろから更に大きな音を上げ、猛スピードで突き進むボートが現れた。乗客は全員ヘルメットをしていて競艇選手のようだ。
あれが、噂に聞くスピードボートか!
スピードボートは水しぶきを上げながら、あっという間に我々を追い越して遠くへ行ってしまった。周りのゆっくりとした自然風景とスピードボートのギャップが何故か可笑しい。
少しずつ変わり行く遠景を眺め、そのまましばらく経つとやがて、岸をはさんだ場所に二つの建物が現れた。
左側がカンボジア入国管理所、右側がラオス入国管理所らしい。
ボートは徐々にスピードを落としカンボジア側に停泊した。乗り場の坂を上ったところにある木造の建物が入国管理所ということだ。
入国管理所といっても格別豪華なわけでもなく、外にニワトリがいるような素朴な建物だ。
建物に入る。
パスポートを渡し、所員と簡単な話をした後、出国税を要求された。
2$だった。
安宿の学生から聞いた情報によると確か5$だったはずだが…人によって税金が違うのだろうか?
出国手続きが終わると、ボートは対岸のラオス入国管理所に向かった。
ラオス入国管理所も素朴な建物だ。
所定の手続きをし、入国税を払うことになったのだが、その額は1$。
確かここも5$と聞いていたのだが?
ビザとは別の許可証の件といい、出入国税の件といい、情報元の学生は相当だまされていたようだ。この辺りでの1$の差はけっこう大きい。きっと、彼は先方の言いなりになってしまったのだろう。
入国手続きはすんなりと終わり、ついにラオス入国を果たした。
情報の少なかったカンボジア~ラオス国境は思った以上にスムーズに通過する事ができた。
強いて苦労した点をあげるとするならば、ボートに長く乗り続けるため、腰が痛くなる事。エンジン音で少し耳がおかしくなる、同じくエンジンの振動で体がしびれる。そんなところだろうか。ただ、こんなものは少し時間が経てば何でもなくなるから問題にもならないのかもしれない。むしろ途中のトイレの方が問題か。適当な小島に停泊して立ちションなので女性には厳しいと思う。スピードボートなら大丈夫だと思うが。
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ラオス・目次
カンボジア~ラオス国境:対岸はラオス