ホーチミンシティからプノンペン行きのバスに乗る。いよいよ次の国、カンボジアだ。
ベトナムはとても「濃い」国だった。この国の持つデタラメさは実に楽しくて何故か懐かしい。再び訪れたい国だ。
ただ、中国と比べると早足で駆け抜けた気がする。
急いだぶん細かいエリアを見逃した感があるが、今後の予定を考えるとこのぐらいのペースで進んだ方がいいのかもしれない。
おそらくカンボジアも同じようなペースで進むことになるのだろう。
バスの中でガイドブックの地図を広げながら、大まかなルートを決めた。
この国は首都プノンペンを中心にして都市が散らばっている。
プノンペンには度々立ち寄ることになりそうだ。
ちなみにガイドブックはハノイで買い込んだロンリープラネットを使っている。
このガイドブックは本当に使い勝手が良い。
「歩き方」のような、ある種の押し付けがましさがまったくなく、旅人自身の選択を尊重し、それを最大限サポートするというスタイルをとっている。
だから、知りたいと思う情報が詳しく載っている。若干うざいくらいに(笑)
それでいながら文章主体だから、見たい遺跡などは自分の目で見るまで楽しみをとっておける。
難点は、英語なので分からない単語を調べる必要があること、そして外国人に盗まれること。後のことになるが、実際に一冊盗まれてしまったことがあった。誰にでも読める本は誰からも盗まれる可能性があるということだ。
ルートを決めて隣りの日本人と話をしていると、ベトナム国境の街、モックバイにたどり着いた。
出国手続きをするため、出入国管理所に入ると、窓口には人があふれかえっていた。中には係員が一人だけ。山のようなパスポートがあるにも関わらず、マイペースでゆっくりとハンコを押している。
遅いなあ…とイラついていると、バスに同乗していた日本人が、すっと現れ、堂々とした態度でロシアパスポートのカバーをつけた日本パスポートを係員に渡した。
すると、たちまち係員の態度が変わり、彼だけすぐに手続きが終わった。
「共産国なんてこんなもんだよ。上には逆らえないってことだ」
…この日本人、何者だ?
ひょっとしたら、ものすごいオヤジなんじゃないかと思い、いろいろ話を聞いてみる。どうやら会社を経営しているらしい。そして休暇をとってベトナム、カンボジアをたびたび訪れているそうだ。
…何でそんなに通っているんだろう?
再び聞いてみる。
理由は大麻と現地妻らしい。
…いろいろな人がいるもんだ。
手続きが終わり、カンボジアへ。
メコン川を渡る事前の街でバスが停車すると、たくさんの人がバスに群がってきた。子供がさかんに手を出す。
「マネー、マネー」
初めての光景だった。
中国やベトナムではこういう光景は見かけなかった。
インドに行くまではこういうことは無いだろう…そう思っていた私に心の準備などまったくなく、目の前の人々にただ、ただ驚くだけだった。
自分の平和ボケを改めて実感。
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臆病者の行進(プノンペン)
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カンボジア・目次
カンボジア国境。その先に見えるのはベトナム国境。